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<誰も知らないMAX 7人の物語1>“灼熱のビッグモスキート”デング・シルバ「国を背負って戦うことが誇り」

 7月7日(日)に東京・国立代々木競技場第二体育館で開催の「K-1 WORLD MAX 2024」のK-1 WORLD MAX 2024 -70kg世界最強決定トーナメント決勝ラウンド進出を決めた、海外強豪の7人(ワイルドカード除く)。一体、どんな選手なのか? 短期連載で開幕戦を振り返りつつ、彼らの素顔を探ってみた(第1回=デング・シルバ)。
“灼熱のビッグモスキート”デング・シルバは、MAX世界開幕戦で璃久をTKOで下し大きなインパクトを残した。190cmの長身から繰り出される攻撃は破壊力抜群で、世界大会の台風の目となっている。元サッカー選手でデザインの専門学校に通っていた意外な顔を持っているだけではなく、相手の動きを緻密に研究する頭脳派ファイターでもあった。
<決勝トーナメント一回戦組み合わせ>
オウヤン・フェン(中国)vs.ブアカーオ・バンチャメーク(タイ)
デング・シルバ(ブラジル)vs.ダリル・フェルドンク(オランダ)
ヴィクトル・アキモフ(ロシア)vsロマーノ・バクボード(スリナム)
カスペル・ムシンスキ(ポーランド)vs.ゾーラ・アカピャン(アルメニア)
――開幕戦の璃久選手との対戦を振り返ってみていかがでしたか?
「彼に関しては、試合前に過去の動画を見て研究し、欠点を把握した上で戦いました。動きが素早く技術の高い選手なのは分かりましたが、同時に弱点も見えましたね」
――どういう弱点が見えていたのでしょうか。
「彼の欠点は、前に出てプレッシャーをかけてくるけどディフェンスが甘いところ。それは、僕がブラジルで戦っている選手と同じような特徴を持っていたため、前進してディフェンスが甘くなったところをパンチか蹴りで仕留める作戦でした」
―― 璃久選手の実力は想定内だったと。
「はい。僕は、過去10戦に関しても、すべての相手に対しての研究をかなりして、10戦とも勝っています。璃久選手も、その部分に関しては研究して、ちゃんとKOで勝てたと思っています」
――いつも試合前は、相手のことを研究して戦略を練っているのでしょうか。
「常に対戦相手を研究し尽くすことが、勝つためには大事なことだと思っています。いつも、みんなから『そんな必要あるの?』と言われますが、前回の開幕戦は対戦相手のみならず、他のトーナメントに参加している選手全員を研究していました。今回も、準決勝・決勝に進むためにも、どんな相手が来ようとちゃんと対戦が練れる様に、帰国後すぐに、全て研究しています」
――トーナメント全員を研究するというのは、かなりの拘り方ですね。試合でのパワフルな姿とのギャップがすごいです。
「選手はジムに入門して、練習してリングに立つだけと思っている選手もいるかと思うんですけど、いいパフォーマンス、ちゃんと勝ち続けるためには、やはり対戦相手というものをきちんと研究する必要があります。しっかりした戦術を考えて戦う選手こそ、いいパフォーマンスをずっとキープできると思っています。研究というものは戦いにおいて最も大事なことだと思っています」
――ちなみに開幕戦は、自分以外に注目していた選手はいましたか?
「 ストーヤン・コプリヴレンスキー、次回の対戦相手のダリル・フェルドンクですね。ストーヤンは、21年10月にGLORYでブラジル人のブルーノ・ガザニから勝利した。ぜひ同じブラジル人としてリベンジしたいと思っていましたが、負けてしまったので残念でした。でも、フェルドンクと対戦できるので楽しみです」
――和島選手を倒したフェルドンク選手と戦いたいのは、なぜですか?
「フェルドンクの練習相手が、GLORY世界ヘビー級王者のリコ・ヴァーホーベンだからです。フェルドンクの戦い方は、パンチやキックにしろコンビネーションがとても良いと思っています。それはヴァーホーベンと練習しているので、とても強いと想像していました。その強い選手と練習しているフェルドンクにもし勝てるのであれば、自分にも名声とかついてくると思っています」
――フェルドンク選手が、前王者の和島選手に勝ちました。どう見ていましたか?
「和島に勝ったこともすごいと思いますが、和島は元王者。勝てるのは当たり前だったのかなと思っています。フェルドンクに関しては研究してみたら、欠点もいろいろ見つかっていますので、勝てたらいいなと思っています」
――組み合わせ抽選会では、オウヤン・フェン選手をみんなが避けました。彼に対する印象はありますか?
「オウヤンが和島に勝てたのは、オウヤンの気持ちの方が和島を上回ったからだと思っています。オウヤンは本当に強い選手。だからこそ自分は、彼と次戦で対戦するトーナメントの枠に入って、ケガが少ないうちに戦いたいと思いました。彼は今ナンバーワンだけれども、自分はブラジル国内でも一番なので、それを証明するためにも、戦いたいなと思っています」
――そもそも、あなたが格闘技を始めたきっかけは?
「18歳の時に『SENAI』というデザイン専門学校を卒業しました。だからといって就職があるわけでもなく、『何をしようかな?』とぶらぶらしてたら、ちょうどムエタイのジムがあったので、2011年にとりあえずそこに入ったことが最初です」
――ブラジルは、サッカーが盛んだと思いますが経験は?
「サッカーはやっていました。サンパウロのクラブチームでユース代表になったこともあります。2年くらいチームで練習していましたが、あまりうまくいかなったので辞めました。身長が190cmあるから、バスケットやバレーボールをやった方がいいといろんな人に言われたけど興味がなかったです」
――キックとMMAの2つをなぜやっているのでしょうか?
「実は、MMAは今年5月に初めての試合をする予定でしたが、K-1との契約もあるので、K-1を先にしてからあとでMMAをやりたいと思っています。ただオープンフィンガーグローブのキックボクシングの試合はしています」
――憧れのブラジル人の格闘技選手はいますか?
「元々、遅めに格闘技を始めたので18歳の時にはアンデウソン・シウバ、ヴァンダレイ・シウバとかいましたけど、すでに弱くなってきていたところだったので、どちらかと言うとムエタイのジムに入っていたので、むしろタイのブアカーオの方がよく見ていましたね。格闘技に入ってから、昔のブラジル人選手を見るようになりました」
――前回の試合が終わった後が、マンガ『ドラゴンボール』のかめはめ波のポーズをしていましたね。
「『ドラゴンボール』は昔からGT・Z・超(スーパー)全てを何回も観るくらい大好きです。最後の『ドラゴンボール超』に関しても、良かった。『ドラゴンボール超』をみて、改めて『ドラゴンボール』って良いなと思いました」
――なぜK-1に参戦しようと決めたのでしょうか。
「ムエタイのジムに入った時、ブアカーオの試合を見ているうちに、2004年のK-1MAXで魔裟斗との決勝がすごく印象的でした。そこから、『K-1ってすごいところなんだな』『トップの大会なんだな』と実感してK-1の試合を色々と見るようになりました。アーネスト・ホーストがいることを知って、トップ中のトップのK-1の舞台に立てて、優勝できることこそが、世界一のチャンピオンになるという事だろうなってことを思い描いていたんです。
きっと、自分が強くなれば参戦できると思っていたので、それが来るまでずっと練習をして、実力をつけてきて、そこから12年後ようやく機会を得ることができて本当に良かったです」
――デング選手は、パンチよりキックの方が自信あるのでしょうか?
「ムエタイを始めた時はキックとヒザ蹴りが一番得意だったけど、キックボクシングをし始めたらパンチ力などの技術を身につけることができました。次の決勝トーナメントでも優勝を狙うには両方できることを見せつつ、パンチの方も重要だと思っています」
――無敗が続いていますが、今後どういうキャリアを歩んでいきたいですか。
「今までの人生は、サッカーにしろ、デザインの専門学校にしろすべて中途半端な人生でした。でも格闘技に入ることで、格闘技が今、プロとしてもずっと続けられています。格闘技を辞めることは今は考えられないし、K-1でももちろん優勝を考えています。優勝ができなくてもどんどん戦い続けて強くなりたいと思っています」
――日本のファンにメッセージをお願いします。
「K-1に出て以来、インスタで日本人ファンの方からの応援メッセージが寄せられるようになりました。温かいメッセージがものすごく心に沁みています。日本人が外国人選手に優しくしてくれるとは思いもしなかったので、応援っていうのは選手にとってとても大事なことだなと実感しています。自分のデビュー戦はブラジル国内でしか放映されなかったので、あまり知られていなかったのですが、今は全世界で見られるようになりました。
私はブラジルを愛していますが、ブラジル人は日本に憧れるます。ブラジルを代表してK-1に参戦する、国を背負って日本で戦うことに、すごく誇りを持っています。7月7日は、世界一になり、ブラジルカラーの黄色いTシャツを掲げたいです」
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