12月27日(水)都内にて、2024年2月24日(土)東京・後楽園ホール「Krush.158」のカード発表記者会見が行われた。
この日、第1弾カードとして発表されたのは2つのタイトルマッチ。ライト級では王者・里見柚己に伊藤健人が挑戦する一戦が組まれた。両者は9月のK-1横浜アリーナ大会で対戦し、伊藤がKO勝利を収めている。宮田充プロデューサーは「里見選手の勢いを見ていると、正直8:2(で里見)ぐらいの試合かと思っていた。KOの番狂わせで、今年自分が見た中では一番インパクトがあった」と評するほどで、里見のベルトを懸けてのダイレクト・リマッチが決定した。
伊藤が「ちょうど2月でデビューから10年ピッタリ。そこでタイトルマッチが来たということも運命を感じましたし、この10年間でいろんな苦労も苦しい思いもしてきて、たくさんの方に迷惑もかけてきたので、お世話になってる方たちの想いも含めて、この試合で必ず勝って、ベルトを必ず巻きたいと思います」と意気込みを語ると、里見は「9月に地元の横浜で伊藤選手に思いっきり倒されて恥をかいたんで。本当は今年の借りを今年中に返したくて、年内にやりたかったんですけど、いろいろ重なって2月のタイミングになってしまいました。2月はしっかりと、横浜でやられた倍返しじゃないですけど、思いっきりKrushのリングで失神させたいと思っています」と応えた。
前回の対戦について、伊藤は「あの試合はベルトが懸かってなくて、それでもチャンピオンとのワンマッチを組んでいただいて、勝つと決めていて。必ずダイレクト・リマッチでタイトルマッチが組まれるような勝ち方をすると決めていたので、その通りにできました。今回の試合が勝負ですね」、里見は「チャンピオンらしく、しっかりKOで勝ちたかったんですけど、勝負の世界は何があるか分からないので。自分はチャンピオンだからって守るという気は一切なくて、伊藤選手は本当に失うものなく本当に倒しに来てて、自分も本当に倒しに行った結果がああいう形になりました。横浜でたくさん応援してもらって、悲しませちゃったので、2月は防衛戦ですけど、自分はリベンジとしっかり倒すというのを決めています」と振り返った。
前回を踏まえ、相手の警戒すべき点について問われると、伊藤は「今、自分が見ているのはKrushのベルトだけ。里見選手に思っていることは何もなくて、このベルトを奪うことしか考えてないです」とコメント。里見は「ああいうパンチで倒されたので、あれには気をつけないといけないし、自分がカウンターを合わせに行ったところに予想外のパンチが来て、全く見えてなくてひっくり返っちゃったんで、今度は自分が、全く逆に思いっきり行ってやろうかなと思ってます」と答えた。その上で、次に向けて里見は「9月の試合では、1Rは自分の想定した動きができた。倒せる攻撃をどんどん仕上げていきたい」とも。また伊藤は「里見に思っていることは何もない」としたことについて「自分が見てるのはKrushのベルトを巻くこと、そしてその後なので、作戦どうこうの話ではないです」と補足。
さらに今回の作戦を問われた伊藤は「正直、作戦とかは全然なくて。いつも言っている通り、全身全霊で全てをぶつけるだけ。その結果が前回の結果でもありますし、今の連勝の結果でもあるので、チームアスラとしてそういうのを見せていきたいですね」と重ねた。
伊藤は今回がプロ初のタイトルマッチ。しかも今所属しているK-1ジム蒲田チーム・アスラとしても初タイトルマッチ、もちろんベルトを獲ればジム初となる。「10年間、勝ったり負けたりでたくさんの人の期待を裏切って、たくさんの方に迷惑もかけてここまで来たんですが、自分は必ずチャンピオンになる人間なので、10年目にしてチャンピオンになる瞬間を今のチームアスラで見せて、後に続く後輩たちにも必ず見せたいし、その後にもチームアスラが続いていくようにしていきたいと思います」と想いを語った。
里見はこれが初防衛戦となる。さらにリベンジマッチでもあり、そのプレッシャーを問われると「自分は何も気にしてなくて、守るような試合は絶対したくないし、それがKrushのチャンピオンじゃなきゃいけないと思ってるし。本当にリベンジですね。タイトルマッチが2つありますけど、自分の試合をメインにしてほしくて。必ず盛り上げるので。KOで勝って、また次に進みたいと思っています」と答えた。リベンジへの自信については「もう今は自信しかないです。負けたのにチャンピオンというのがイヤで、ずーっとリベンジしたくて、早くやりたいなと思ってます」と、想いを吐露。
両者ともこれが2024年初の試合となるが、伊藤は「誰が見ても『伊藤、変わったね』と言われるような試合を見せて、2月からチャンピオンとしてのスタートを切っていきたいですね」、里見は「チャンピオンは絶対負けちゃいけないんで、自分の方が全然別格でよかったと思わせたいですし、簡単に名前を挙げられないような、強くて『やりたくない』と思わせるようなチャンピオンにならないといけないので、その強さをまず2月に見せたいと思っています」と意気込んだ。
12月の後楽園大会では、前王者の大沢文也を下した大谷翔司が伊藤との対戦を希望。それに勝った上で里見のベルトに挑戦したいという希望を述べていたが、それについて伊藤は「名前を出してもらいましたが、自分はチャンピオンになってからがスタートなので、今は特に何も思ってないです」、里見は「大沢選手にしっかり判定で勝つってすごく難しいことだと思っているんですけど、自分はその位置にはいたくなくて、もっともっと上を見てやっているので」という反応。
伊藤が前回のKOを再現して、10周年で初のベルトを巻くのか、それとも里見が意地のリベンジを果たして防衛するのか。いずれにしても倒す気満々の両者、その激突はKO決着必至だ!
もう一つのタイトルマッチは、Krushスーパー・フェザー級タイトルマッチ。王者・髙橋直輝に挑戦するのは横山朋哉だ。髙橋は9月大会で中島千博に判定勝利して新王者となり、こちらも今回が初防衛戦となる。宮田プロデューサーは「60kg王座は初代が卜部弘嵩で、Krushの最初期からあるベルト」とその歴史を紹介。髙橋は第11代王者にあたる。
王者、挑戦者ともに2023年は3戦全勝と好調。髙橋は2022年5月から5連勝中で、そのうち2つがKO勝利。横山は連勝数は3でいずれも判定勝利だが、Krushでタイ人を下した後はKー1で大岩龍矢、江川優生と、ネームバリューのある相手に勝利を重ねている。宮田プロデューサーは「もちろんK-1でも勝負してほしいが、2021年の王座決定トーナメント決勝で中島千博に敗れており、“青春の忘れ物”ということでぜひ狙ってほしいということでオファーさせてもらった」と、対戦決定の経緯を語った。
横山は「2年前の忘れ物を獲りに来ました。このベルトは誰もが獲れるものじゃなく、『あれ?』と思う選手が獲ったり、ずっと狙っている選手が獲れなかったりと、本当に価値あるベルトだと思うので、この2ヵ月間、しっかり追い込んで必ず獲りたいと思います」とコメントすると、髙橋は「忘れ物(として渡すこと)にならんように、自分がしっかり持ったまま勝っていきたいと思います」と応えた。
相手の印象について聞かれると、横山は「ダビデ像しか印象がなくて(笑)。試合の印象は特にはないです」と回答。「60kgに上げて連勝できてるので、向かい合って何かを感じる選手かなと思って。もちろん油断してないですし、ここを警戒するというよりは、何かあったらというのを想定して練習してます」と補足した。
髙橋がトリッキーと言われることについては「僕はそんなに感じないですけど、リングで向かい合って感じることなんですかね。当たっちゃえばこっちのものなんで、気にしてないです」と、改めて自分のパンチに自信を覗かせた。
対する髙橋は「正直、メチャ強いんじゃないですか? 僕は以前から強いなと思ってて、『この人とやりたいな』とずっと思ってたんで、楽しみですね」と、横山を評価。
相手より上回っていると思う点について、横山は「破壊力、爆発力」、髙橋は「“絶好調”な気持ちですかね」と、得意のフレーズでまず笑わせつつ、「スピード」と返答。
横山が言った「破壊力」への対抗について、髙橋は「いつも通りやっていこうかなと。破壊力はすごいなと思うんですけど、それ以上に柔軟性がすごいなと思っているので。『グー・チョキ・パー』で、パーの選手にはチョキで勝負してる感じなので、僕もそこに『グー・チョキ・パー』を合わせていこうかなと思います」とコメント。「ちなみにジャンケンの強さは?」と問われると、何と宮田プロデューサーを相手にジャンケンを実演。だが何度やっても“あいこ”で勝敗が決まらず、横山も「これは完全に泥試合ですね」と評する結果に。
この柔軟性について、横山は「上に行くには頭を使わないと勝てないと分かって、その戦い方を今見つけているところ。試行錯誤しながら毎日やっているので、合ってるんじゃないですかね」とコメント。
髙橋は初防衛戦となるが、「いつもと変わりないです。相手、いつも強いじゃないですか(笑)。結局、練習しかないんで」と、その部分で特にプレッシャーが増しているということはない模様。王者になって変わった部分を問われると、「ベルトを獲った試合の後もすぐ練習して、休みの時も練習してという感じで、あんま変わらんかなという感じですかね。気持ちは変わりましたよ。『チャンピオンやから頑張らんといかんな』って」と、メンタル面での変化を明かした。
さらに「チャンピオンらしい試合とは」との質問には「やっぱ、Krushやから倒さないととは思ってますよ。前の2試合、ちょっとポイントアウトするような試合になっちゃったんですけど、倒さないとアカンなと思っているので、室伏広治にならってハンマーを買いました」と告白。7.3kg、3万6千円のものを2つ買ったということで、これには宮田プロデューサーも絶句していた。
前述の通り、2023年は両者とも3戦全勝。好調の理由について、髙橋が「(“絶好調”の)貼り紙ですかね(笑)。まあ練習も頑張ってるんで」と答えると、横山も「“絶好調”なんで」とかぶせる。続けて「やるしかない環境を作ってるんで、そこで自信をつけて。いろんなところに出稽古に行かせてもらって、そこで高め合って練習してるんで、そこはすごく強みになってますね」と語った。出稽古先を問われると「Battle Boxに週1~2回行ってます。宇佐美パトリック正選手とか宇佐美メイソン秀選手とかと練習して、毎回毎回しごかれながら頑張ってます」と答えた。
横山は2021年に王座決定トーナメントで決勝まで進み、王座が目前というところまで近づいた。今回の再挑戦については「自然な巡りあいなのかなということで、前回のことはあまり気にしてはいないですけど。自分のやってきたことが結果に出てるかなというだけで、別にタイトルマッチだから気持ちが高まってるとかも全然ないですし、どの選手とやるのでも全力を出しているので」とコメント。さらに「Krushのベルトはずっと欲しかったので、いつ来てもいいように準備してましたし、正直試合をすぐやりたかったので、組まれてワクワクしています」とも。
「2024年をどういう年にしたいか」との質問には、横山は「今年は大事な試合を勝っていったので、来年は1個ずつ1個ずつ、目に見えるものを獲りにいく年にしたい。このKrushのベルトは1歩目とかじゃなく、獲らないといけないものなので、今はそれしか見てないです」、髙橋は「来年は辰年なので、うなぎ登りじゃないけど、“龍登り”で上がっていこうかなと思います。気持ちも“龍龍と”頑張っていきます」と回答。
まさに“絶好調”の髙橋が、勢いに乗る横山をも撃破して王座を盤石にするのか、その勢いのままに横山がKrushの頂点にも立つのか。展開の読みづらい一戦、果たしてどうなる?