11月28日(火)都内にて、12月17日(日)東京・後楽園ホール「Krush.156」の記者会見が行われた。
同大会のカードはすでに本戦10試合、プレリミナリーファイト3試合がリリースの形で発表されているが、この会見ではそのうち4カードに出場する8選手が登壇し、意気込みを述べた。冒頭では宮田充プロデューサーが「今大会では選手の状況等により、タイトルマッチはありませんが、各階級のいいカードを組みました」とコメント。
最初に登場したのは[Krushライト級/3分3R・延長1R]で対戦する大沢文也と大谷翔司。前同級王者の大沢は今年6月に王座を奪われたが、翌月のK-1で東本央貴に勝利し再起。今回は5ヵ月ぶりの試合となる。対する大谷翔司はKNOCK OUTを主戦場とし、6月の後楽園大会でKrush初参戦。これが2戦目となる。
9月までKNOCK OUTのプロデューサーを務め、10月からK-1 GROUPに復帰しKrushプロデューサーとなった宮田充プロデューサーは、両団体の対抗戦となるこのカードの実現に「感慨深い」とコメント。
大谷も「KNOCK OUTから来ました大谷翔司です」と挨拶。「Krushライト級は実力が拮抗してて混沌としていますが、自分がそこにスパイスとして入っていって、いずれは主役となり、KNOCK OUT、Krushを盛り上げられる存在になりたい」と意気込み。また大沢は「今回の試合はたぶん僕らしくなく、ちょっと面白い試合になるかもしれないです」と述べた。
相手の印象を問われると、大谷は「それなりに知名度があり、いい選手なのは間違いないですが、試合となるとそこまで印象はないですね」と回答。また「元王者という肩書きがオイシイですよね」とも。大沢は「逆に知名度がなくていい選手。僕は知名度があってあんまり強くない選手なので、逆かなと」と返した。
試合については「本気でベルトを狙っているので、『次は大谷に行かせていいんじゃないか』と思われるようなインパクトある勝ち方を」(大谷)、「もともとは別の選手のオファーが来ていタンですが、『知名度なくていいんで、強い選手とやらせてください』と返したら、大谷選手の名前が出てきたので調べたら強い選手なので受けました」(大沢)とコメント。さらに冒頭に語った「僕らしくない」という点については「大谷選手との対戦に備えて、上の階級の選手と練習しているので、それが出せれば。僕は5試合に1回ぐらい、いい試合をするので、それが今回になるんじゃないかと」と述べた。
見解が分かれたのは、「対抗戦」に関する意識についての質問だ。大谷が「Krushのリングで勝ち進んでいくことが、KNOCK OUTの強さを示すことになるので」と答えると、大沢は「本当に対抗戦の意識ありますか?」と大谷に質問。「僕は正直ないんですよね。自分はKrushの代表だと思ってないし、どこの団体がどうとかという気持ちはなくて1人の格闘家としてやりたいなという感じ」と答えた。
この試合の先に見据えるものについても見解は分かれた。大谷が「今回どんなにいい勝ち方をしても、現王者の里見柚己選手とすぐにというわけにはいかないと思うので、里見選手に勝っている伊藤健人選手(との対戦)を考えています」と答えると、大沢は「先のことは考えてないです。目の前の大谷選手のことだけ」と、この一戦に集中する気持ちを示した。大沢は続けて、「考えているとしたら、この大会のカードが僕を含めてインパクトがなさすぎるので、お客さんが入らないんじゃないかと心配です」と述べ、宮田プロデューサーに「メインはまだ決まってないんですか?」と質問。「ちょっと自分、メインは勘弁してほしいですね。岩尾力とかの方がメインにふさわしいしKrushが盛り上がると思うんで」と仰天の提案。宮田プロデューサーは困惑しつつも「参考にさせていただきます」と答えるにとどめた。
また、他団体ではヒジありでの試合もこなしている大谷に、大沢が「ヒジありの特別ルールでも」と提案すると、大谷が「余裕で勝っちゃいますよ」と返す場面も。
大沢自身も言うように、知名度では前王者でもある大沢が今大会の出場選手の中で一番。大谷戦は対抗戦という側面もあり、メインイベントの最有力候補と思われるが、大沢の発言によりどうなるのか? 試合順発表も見逃せなくなってきた。
続いての登場は、[Krushバンタム級/3分3R・延長1R]で対戦する齊藤龍之介と愛瑠斗の2人。愛瑠斗は「55kgから53kgに落として、Krushでは一発目。ここで勝ってベルトに行ければ」、齊藤はまず9月大会がケガにより欠場となったことを詫びた後、「試合も期待してくれたらうれしいです」と述べた。また愛瑠斗が「身長が高くていっぱい蹴ってくる。顔もカッコいいので、しっかり倒したい。相手が俺に恐怖を覚えるぐらい圧倒したい」とNovelと、齊藤は「55kgから落としてきてパワーはあるが、スピードとかテクニックは自分の方が全然上。いけそうだったら最終的に倒して勝ちたい」と返す。また、前大会で同階級の壬生狼一輝vs心直が盛り上がったことについて問われると、「記者会見は面白いなと思ったけど、自分にはできない」(愛瑠斗)、「全く同じ意見。2選手ともこれからタイトルを狙うには勝たないといけない相手」と答えた。
選手層が厚くなってきたバンタム級の中で「ここは負けない」という点を問われると、愛瑠斗は「ギャンブルが好きなので、ギャンブルでは絶対負けません」と発言。ちなみに一番好きなのはパチンコで、最大16万円勝ったことがあるとのこと。対する齊藤は「今のK-1 GROUPはパンチの強い選手が多いが、自分は蹴りでも倒せるところを試合でも見せていきたい」と答えた。試合スタイルもキャラも異なる2人の激突はどうなる?
続いては同じく[Krushバンタム級/3分3R・延長1R]の一戦、白幡裕星vs小浦翼。K-1 GROUP3戦目の白幡に対し、元ボクシング東洋太平洋ミニマム級王者の小浦はこれがキック・デビュー戦。そのベルトを持って会見に臨んだ小浦が「ボクシングでチャンピオンになってるんで負けないでしょうって感じで、ぶっ倒したいと思います」とコメントすると、白幡は「対戦相手は強いと思うけど、そんなキック甘くないよというところを見せたい」と反応。その上で「12月は10年前に師匠である梶原龍児さんが引退した月。その月にKOで勝ちたい」とした。
小浦が白幡の印象について「若くて勢いのある選手だと思うけど、ぶっ倒したい」と答えた後に笑顔で「よろしくね」と声をかけると、登壇時からピリピリとした表情の白幡は「いや、そんな甘くないから。ニヤニヤしてるけど、当日ビックリすると思う」と返す。小浦は笑顔のままで「言ってろよ。やってやっから」と応戦し、緊張感が一気にアップ。さらに小浦が「殴り合いたいですね」と言うと、白幡は「自分は競技としてやってるんで。殴り合いたいだけなら練習でもできるでしょ」と返し、対立ムードはさらに増す。
キックの練習は1年足らずという小浦がキック転向の理由について聞かれ、「ボクシングで計量ミスしてしまって、試合ができる期間が限られてきちゃうので、自分も年が年なので、ラストチャンスにK-1でベルトを」と答えたのに対しても、白幡は「計量クリアしてない人間がK-1チャンピオンになるとか、こうやってベルトを持ってきてるのも選手として終わってるなと思うので、まずルールをクリアしてから、こういうのを持ってくるようにしてもらいたいですね」と噛みつく。異種目から参戦の元王者にイラつきと対抗意識を隠せない白幡と、余裕の表情を見せる小浦。当日のリングは危険な展開になりそうだ。
最後の登壇は[Krushスーパー・バンタム級/3分3R・延長1R]、岩尾力vs内田晶。岩尾は昨年夏の復帰以来、3試合連続1RKOということでタイトルマッチも検討されたが、チャンピオンのコンディション等の事情により今回はノンタイトルで内田との対戦となった。宮田プロデューサーは「逆にここで内田選手にチャンスができたと思う。根性を見たい」とコメント。
内田も「自分にチャンスが来たのは夢があるなと思った。ここでひっくり返す」とこの対戦に燃える。岩尾は「今年最後の試合にワクワクしている。タイトルマッチじゃなくても相手が内田選手でも、倒すだけなんで。誰が相手でも関係なくやってやろうと思う」と語る。
内田は、岩尾と十数年前、ジュニアキック時代に3回対戦して全敗だったことを明かした上で「岩尾が交通事故に遭ったことも知っているし、いろんな思いがある」と述べると、岩尾も「プロのリングで戦えることにワクワクしている。だが、最近は倒されている試合が多いので、倒されないように頑張ってもらいたいなと思う。4回目も変わらず、勝つのは僕なんで」と返した。
圧倒的に不利と思われている状況の中、内田は「自分の引き出しを全部出して勝つ。見といてください」と意地を覗かせるのに対し、岩尾は「自分はボディで倒そう、1RでKOしようと思っているわけではなく、古川会長の下で練習していることを出したら相手がマットに沈んでいるるだけ。4戦4勝4KOでタイトルマッチに進んで、K-1の2人(金子晃大と玖村将史)に割って入る」と冷静な対応。また、会見冒頭で大沢文也が「メインにふさわしい試合」として挙げたことには「自分が言える立場にないので、見てる人がファン投票で決めてくれてもいい」(内田)、「文也君が『この大会はつまらない』と言ってたけど、僕はそんなことないと思っている。メインでやれるならメインらしい試合をしたい」と語った。
大沢の発言により、試合順への興味も高まってくる今大会。「どの試合もインパクトがない」という大沢の発言通りになってしまうのか、それを覆すような大会になるのか? 大会まで3週間弱、選手たちの意地に注目!