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「K-1 WORLD GP」12.3大阪<振り返りコラム>黒田斗真が腕を折りながらも“気合い”で初代バンタム級王座決定T優勝!だが、これはゴールではなく、新たな闘いの始まりだ!

 12月3日、エディオンアリーナ大阪で開催された「K-1 WORLD GP 2022 JAPAN~初代バンタム級王座決定トーナメント~」。注目のバンタム級王座決定トーナメントは1回戦から熱闘の連続。決勝戦の石井一成vs黒田斗真も延長までもつれこむ大接戦の末に、判定2-1で黒田が勝利し、栄えある初代K-1バンタム級王座を獲得した。

 黒田の優勝は見事だった。1回戦がムエタイ強豪のヨーシラー・チョー.ハーパヤック。トーナメントではいかに怪我せず、体力を温存しながら勝ち上がれるかの勝負になるが、黒田は1回戦から難敵のヨーシラーとフルパワーで激闘を展開。ヨーシラーの正確無比な右ミドルに対して、ローやミドルを蹴り返し、パンチで反撃し、延長で振り切って判定勝利を収めた。

 試合後、黒田はヨーシラー戦の2Rに左腕に異変を感じた(骨折)と明かしたものの、準決勝、決勝ともに随所に左ストレートを放つなど「気合いで乗り切りました」(黒田)と怪我を一切悟らせずに一日三試合・合計7Rを戦い抜いた。

 決勝戦で黒田と大接戦を繰り広げ、延長1-2のスプリット判定で惜敗した石井一成の戦いぶりも称賛すべきものだろう。K-1参戦2戦目でのトーナメント、K-1ルールへの慣れという点でハンデがある上に「優勝候補の大本命」として注目される立場でもある。

 にもかかわらず、1回戦でタフなオスカル・ボルケスをパンチで仕留めて2RKO勝利を収めると、準決勝では「倒すバンタム級」、現Krushバンタム級王者の池田幸司相手にアグレッシブな攻めを展開して判定勝利した。こちらも激闘の連続で、体中にダメージを抱えながら、それでも「今日獲ることに意味がある」(石井)と決勝戦でも黒田と激闘を展開する。前に出て攻撃を仕掛ける石井、下がりながら攻撃を合わせる黒田、一進一退の攻防は延長までもつれ込んで黒田勝利となった。試合後、石井は悔しさを露わにしながらも、勝者を称えた。

「黒田選手は、お互いに2試合ずつやって決勝だったんですけど、本当にボロボロの状態で戦って、あれだけ殴り合えたら気持ちいいというか……ただ、勝ちたかったですね」(石井)

 黒田vsヨーシラー、石井vs池田など、見応えのある試合が多く、盛り上がったトーナメントだが、新階級バンタム級としてはまだスタートラインに立ったばかりだ。今回は、黒田、石井、池田、壬生狼一輝らバンタム級選手たちによる「初代バンタム級王座」を巡る戦いだったが、これからはK-1の他の階級の選手や試合との勝負になる。

 今大会でいえば、ステファン・ラテスク、ジョムトーン・ストライカージム、江川優生、玖村将史、金子晃大、KANAらによる衝撃的なKO劇や、バンタム級決勝戦の前のセミファイナルで9分間激しく打ち合った軍司泰斗vsワン・ジュングァンが観客にインパクトを与えた。そうした試合の数々と、今後のバンタム級は「インパクト」の面で比べられることは必至だ。

 重量級の豪快なKO劇や、試合開始から終了までKOを狙ってアグレッシブに攻め続けるK-1チャンピオンたちと比較された時に「バンタム級は面白い」と果たして観客から評価されるかどうか。

 K-1は女子を含めて11名のチャンピオンがすでに存在し、12人目のK-1チャンピオンとなったのが黒田斗真。ここからは対戦相手に勝つことと同時に「階級間の争い」にも勝っていかなくてはならない。

 今回、サッタリvsラテスクが「昔のK-1ヘビー級を思い出した」と好評を得たように、パワーや迫力の面で最軽量級のバンタム級はハンデがある。ただ、そうしたことをものともせず、KOを量産することで「K-1のエース」という不動の地位を築いたのが武尊と武居由樹だった。また中村拓己プロデューサーも「首相撲がない分、絶え間なく攻撃を出せる・スピーディな攻防が続く・そのうえでKO決着が生まれる…そういう意味では、軽量級の方がK-1ルールに向いている部分もある」と軽量級そのものに可能性を感じている。

 チャンピオンの黒田を筆頭に、バンタム級選手たちが「他の階級に負けないインパクトを残す」と競い合えば、K-1全体の盛り上がりにもつながることだろう。

 黒田斗真、石井一成、池田幸司、壬生狼一輝、さらには「K-1が大好きなので、自分のスタイルをK-1ルールに合わせて戻ってきたい」と表明したヨーシラー、飛びヒザ蹴り一発でTKO勝利してインパクトを残したリザーブの野田蒼、トーナメント出場がかなわなかったが他団体王者の実績を持つ松谷桐など、実力者がひしめくバンタム級から誰が飛び出してくるのか。初代バンタム級王座決定トーナメントはゴールではなく、新たな闘いの始まりだ。
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