RISE伊藤隆代表がK-1との対抗戦で描く未来予想図 「日本代表と世界対抗戦を開催するところまでやりたい」
両大会の熱い戦いが、どんな結末になるのか。どんなカードが飛び出すのか注目が集まる中、RISEの伊藤隆代表を直撃した。
――3月の両大会で、K-1とRISEの対抗戦が計10対10で組まれることとなりました。この対抗戦についての熱をどう感じていますか?
「今回の対抗戦は、22年に那須川天心vs武尊が開催された『THE MATCH 2022』の熱をいかに引き継ぐか、というのがテーマになるかと思います。昨年も、3対3、計6対6の対抗戦をそれぞれの大会で行いましたが、引き継ぐことができたのかというと、そこまでの熱はなかったように感じました。
そのことも含めまして、今回は規模を広げての10対10マッチ、お互いにチャンピオンもしくは実績のある選手を出しての対抗戦として、ファンのみなさんが本当に見たいカードを実現したいと考えています」
――K-1側からは、金子晃大選手、軍司泰斗選手、レオナ・ぺタス選手、玖村将史選手が記者会見で対抗戦に対する、それぞれの思いを語りました。他にも両団体の各選手がSNSで対抗戦への思いや参戦を表明しています。大きな波が来ているように思います。
「はい。会見を拝見しまして、それぞれの選手の思いを受け止めました。以前からSNSを通して、互いのチャンピオン同士がトラッシュトークではないですけど、言い合いをする場面も見ていますので、意識していることを感じています。
やはり国内にはチャンピオンベルトがたくさんあって、同じ階級に目立った選手がいれば対戦したくなるのがファイターの本音です。ナンバーワンになりたくて格闘技をやっていると思いますので、僕も同じ選手でしたから、そこはよく分かります。逆に、それがないとダメでしょうね。だから僕は、なるべく選手が戦える場所、夢を提供するために動いています」
「うちの選手でいえば、門口(佳祐)なんかは、ルール問わず対抗戦で結果を残しています。ファイターのあるべき姿で戦いに臨み、そして実力を証明しています。シュートボクシングの海人もそうですが、そうした志を持って挑戦する選手を僕は応援したいですね」
――伊藤代表からも、対抗戦への意気込みはかなりの思いを感じますね。
「もちろん、やるからには負けたくないのが本音です。でも、僕が選手たちに言っているのは、団体うんぬんもありますけど、一番は自分が輝くためにやれと。いずれ、それが団体のためになると伝えています」
――気になるカードですが、経過を教えてください。
「互いにいくつか案を出し合う中で、3つか4つくらいは同意していて、残りを詰めている段階ですね。必ずもチャンピオンでなくても僕はいいと思っています。勢いのある若手と中堅が当たっても面白いと思いますし、チャンピオンの縛りはないですね。柔道の団体戦のイメージで、先鋒、次鋒、中堅、副将、大将と分けてもいいし、5対5だとそれぞれの大会でどちらが勝つか決着がつく。これまでうちが勝ち越してきましたが、今度はどうなるのか分からないです」
――ルールは、それぞれの団体で行う形式になるわけですか。
「はい、そうなると思います。ただ、軍司選手がダブルタイトルマッチを提案してきましたよね。それはルールが違うので無理だというネガティブなことは言いたくないので、互いに歩み寄り、前向きに考えたいところです」
――K-1はクリンチ禁止、RISEはワンキャッチワンアタック(クリンチからの攻撃が1回OK)が大きな違いですね。
「そこをどこまで歩み寄れるかですね。THE MATCHの時は、大会のルールとして細かく統一した形がありました。例えば、ワンキャッチで膝は可能だけど、蹴り足を掴んでの攻撃は禁止とか、足をすくう動きやタイナー(脇で蹴りをはさむ形)の動きは禁止とか、ファンの方にも伝わっていない互いに譲歩した細かいルールがあったんです。THE MATCHルールというか、そういうルールの統一を互いに歩み寄ることができれば、もしかしたらダブルタイトルマッチが可能になるのかもしれません」
――各団体でルールの見直しがあっても、面白いですね。
「世界基準のルールを新しく作るとか、そういうことがあっても面白い。どういうルールが世界基準になるのか考える必要はありますけど」
――日本のトップ対決は、世界と比較してレベル差をどう感じていますか。
「僕は、技術のレベル差はないと感じています。外国人と日本人は、フィジカル差があるとは思いますが、技術においては世界水準、いえ階級によっては世界よりも高いのではないかとさえ思っています。ただメンタル、フィジカルが揃ってこそ技術が出せると考えています。その部分を埋める必要はあるとは思っています」
――フィジカル差を埋めるのは、試合の慣れもありますね。
「フィジカルで押されて、テクニックを出せないことが勝敗に響くこともありますので、そこはトレーニングで補うか試合を積んで慣れる必要があるでしょうね。ただ、選手層が厚く、極端にフィジカルが影響しない70kgまでの階級は、十分に世界で通用すると僕は見ています」
――最後に、今回の対抗戦で期待するものは何でしょうか?
「立ち技格闘技が、また盛り上がることです。対抗戦でRISEが勝った、K-1が勝っただけでは終わらずに、今度は日本代表と世界の対抗戦を開催するところまでやりたいですね。『THE MATCH WORLD』のような名称で世界大会を開催し、ONEやGLORYの選抜チームと日本の精鋭が対戦すれば、また熱を生むことができる。日本代表選抜戦の予選を行うとか、そういった道筋まで作ることができれば、大きな波になると思っています」
――たしかに『THE MATCH WORLD』が開催できれば、見たいファンも多いと思います。
「名称はともかく、業界全体一丸となって面白いものを作り上げていきたいですね。プロ野球のセ・リーグ、パ・リーグのような感じで盛り上がっていけばいいし、MMAに負けないように、僕たちがファンに夢を提供していきます」