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コラム

「K'FESTA.6」3.12(日)代々木<特別コラム>30周年記念大会のメインは大和哲也vs林健太、セミは朝久泰央vs与座優貴に決定!ベルトへの想いの強さと、ライバルに負けられない意地と

 3月12日(日)東京・国立代々木競技場 第一体育館「K-1 WORLD GP 2023 JAPAN ~K'FESTA.6~」。今大会に向けた特別コラムを連日配信します。今回はスーパー・ライト級王者 大和哲也vs挑戦者・林健太&ライト級王者・朝久泰央vs挑戦者・与座優貴編を公開!

 K-1の生誕30周年記念イヤーを飾るにふさわしい豪華対戦カードが並んだ「K'FESTA.6」。7大タイトルマッチ、京太郎vs石井慧や野杁正明vsジャバル・アスケロフなど注目のワンマッチ、そして先日発表されたK-1×RISEとの対抗戦が並ぶ中、中村拓己K-1プロデューサーが大会のトリに選んだのはメインイベント=大和哲也vs林健太、セミファイナル=朝久泰央vs与座優貴だった。

 昨年から徐々に海外勢の来日規制が緩和され、今大会にも強豪外国人選手が多数参戦。日本のトップファイターが世界の強豪を迎え撃つ図式のカードが並ぶなか、日本人対決によるタイトルマッチが今大会を締めることになったのは、この2試合にそれだけの意味があるからに他ならない。

 朝久と与座のライト級タイトルマッチは互いの感情が激しくぶつかり合う因縁のリマッチだ。昨年2月にスーパーファイトで対戦した時は、下馬評は王者・朝久の圧倒的優位。K-1・Krushでわずか2戦目の与座が大舞台に抜擢されたことを疑問視する声すらあった。ところが与座は接戦に持ち込み、延長で朝久を振り切って大金星を挙げた。

 この試合で足を負傷した朝久が治療のために長期欠場したのに対して、与座は8月に篠原悠人をKOし、12月には元ムエタイ王者のエークピカート(現ペットサムイ)からも勝利を収め、1戦ごとに評価を高めた。1年前に屈辱を味わい試合から遠ざかっていた王者・朝久と、この1年で一気に評価を高めた挑戦者・与座。直接対決の結果も含めると勢いは完全に挑戦者だ。

 しかもこの2人は対戦が決まる前から舌戦を展開し、カード発表記者会見からすでに戦闘モードに突入。試合に向けて公開された煽り映像(https://youtu.be/WqFnuxVaJ2A)を見ても分かる通り、ここまで両者はことあるごとに衝突し、互いに「コイツにだけは負けられない」という思いをストレートに表現し、殺伐とした空気を漂わせている。

 1年間リングには立てなかったが「治療しながら、それ以外の箇所を鍛え上げた。圧倒的な力でひねり潰す」と自信を見せる朝久か、この1年で自信を深め「自分の方がチャンピオンにふさわしい。あとは勝って証明するだけ」と言い放つ与座か。

 対戦相手へのむき出しの感情のぶつかり合いは日本人対決ならではのもの。しかもそれがベルトのかかったタイトルマッチとなれば、技術的にもトップレベルの攻防になる。朝久vs与座はまさにK-1最高峰の遺恨マッチと言えるだろう。

 大和vs林のスーパー・ライト級タイトルマッチは朝久vs与座とは趣の違う日本人対決だ。大和はK-1 WORLD MAX出場経験のある数少ない選手。13年前、国立代々木競技場第一体育館で開催されたK-1 MAX -63kg日本トーナメントで伝家の宝刀・左フックを炸裂させて3連続KOで優勝を果たす。

 この時は旧K-消滅で世界大会は開催されず大和のK-1世界王者になる夢は潰えたかに思われたが、昨年3月の「K'FESTA.5」で王者・山崎秀晃を左フックでマットに沈め、K-1のベルトを巻いた。12年越しの夢を同じ代々木第一、しかも同じ左フックでかなえる劇的なドラマを演じてみせた。

 大和は試合・練習のかたわら講演活動にも力を入れ「苦しい時期を乗り越えて、13年後に返り咲いたチャンピオンはなかなかいないと思う。僕にはチャンピオンとしてまだまだ伝えたいことがあるので絶対にベルトは防衛します」と話す。過去のK-1を知り、現在のK-1でベルトを巻き、未来のK-1を切り拓く。まさに大和は唯一無二のK-1チャンピオンだ。

 挑戦者の林はKrushでコツコツと実績を積み重ね、Bigbang王座を獲得し、2018年のK-1ライト級世界最強決定トーナメント優勝でブレイク。その勢いに乗って、2019年の「K'FESTA.2」で当時の王者・卜部功也を破ってK-1ライト級王者まで上り詰めた、まさにK-1・Krushの叩き上げだ。

 ただし、林本人に「上り詰めた」という達成感はなかった。ライト級王座は初防衛戦でゴンナパー・ウィラサクレックに敗れて手放してしまったため、実に2年以上もの間「元K-1王者」と呼ばれ、悔しさをかみしめてきた。スーパー・ライト級に階級を上げて、再びチャンスを掴むまでには黒星も喫した。ようやく巡ってきたチャンスだけに、王座奪取への想いは強い。

「僕は“元チャンピオン”という肩書きはないと思ってるんです。試合当日リング上でチャンピオンになるのは僕か大和選手しかいない。だったら何があっても勝ちますよ。大和選手のベルトを守りたいという気持ち、僕のベルトを獲りたいという気持ち。そのぶつかり合いになるなら、僕は絶対に負けないです」

 また林がスーパー・ライト王座を獲得すれば武尊、卜部功也、野杁正明に次ぐ4人目の2階級制覇になるが、この3人が圧倒的な強さと戦績で2本目のベルトを巻いたのに対し、林は負けを何度も経験したうえでの2階級制覇になる。大和がそうであるように、林がスーパー・ライト級での王座返り咲きを果たせば、これまでとは違った形での2階級制覇王者の誕生となる。

 大和が13年掛けて掴んだベルトを防衛し、独自のチャンピオンロードを邁進するのか。林が2階級制覇の栄光を掴んで、林にしかできない新たなチャンピオンロードを創っていくのか。この試合は朝久vs与座とは違う形で、大和と林のベルトへの想いがぶつかる試合になるはずだ。

 今回の試合順は中村プロデューサーが動画が全試合順を解説・発表するという新たな試みが行われた。そのなかで中村プロデューサーは大和vs林をメインに選んだ理由をこう話している。

「日本人同士の生の感情のぶつかり合いは格闘技の魅力で、いわゆる新生K-1のなかで創ってきた一つの作品の形であり、朝久vs与座はその集大成のような試合だと思います。ただし、今年はK-1生誕30周年記念という記念すべき1年であり、今回は会場もK-1旗揚げの地・代々木第一で、われわれK-1の年間最大ビッグマッチ『K'FESTA』です。その大会のメインイベントとして、K-1の歴史、現在、未来がどうつながるのか。それを見せられるのは大和哲也vs林健太だな、と。色々な意味があるカードがある中で、最後はこの2人のストーリーを噛み締めて、どんな結末を迎えるのかを見届けてもらいたい」

 大和vs林・朝久vs与座はもちろん、リングに立つ2人のストーリーが交差した結果、何が生まれるのか。盛りだくさんの「K'FESTA.6」の結末を見逃してはならない。
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