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「K'FESTA.6」3.12(日)代々木<特別コラム>和島大海vsジョムトーン・野杁正明vsアスケロフ 中量級にもvs世界という過酷な“日常”が戻ってくる

 3月12日(日)東京・国立代々木競技場 第一体育館「K-1 WORLD GP 2023 JAPAN ~K'FESTA.6~」。今大会に向けた特別コラムを連日配信します。今回はスーパー・ウェルター級王者・和島大海vs挑戦者ジョムトーン・ストライカージム・-69kg契約のスーパーファイト 野杁正明vsジャバル・アスケロフの中量級編を公開!(文:井原芳徳 BOUTREVIEW)

 今から30年前の1993年4月30日、国立代々木競技場第一体育館大会で旗揚げしたK-1は、それから長らく無差別級の戦いを主軸に開催された。無差別級以外の階級が本格的に始動したのは2002年2月11日、K-1 WORLD MAX 日本代表決定トーナメントが初開催されてからだ。契約体重は70kg。このトーナメントで優勝した魔裟斗は、アルバート・クラウス、ブアカーオ・ポー.プラムック、アンディ・サワー、アルトゥール・キシェンコ、佐藤嘉洋ら世界の強豪としのぎを削り、2009年大晦日のサワー戦で引退するまで、ゼロ年代のK-1ブームをリードしてきた。

 当時のK-1がWORLD MAXで掲げたテーマは「人類最激戦区」だった。ボクシングでもヘビー級は一発一発の迫力が人々を魅了し、軽量級はスピーディーな技術戦や日本人同士のライバルストーリーで日本のファンを楽しませてきたが、世界を見渡して選手層が最も厚いのはウェルター級からミドル級の70kg近辺で、フロイド・メイウェザーが特に注目されたのもこのあたりの階級で戦っている時代だった。総合格闘技のUFCのスター、コナー・マクレガーが活躍するのも約70kgのライト級だ。どの格闘技においても、もっと軽い階級の層が厚い日本人にとって、70kg近辺は厳しい戦いの場だが、だからこそ世界の猛者に立ち向かう選手達の姿がファンの感動を呼び、魔裟斗は時代の象徴となった。

 現体制のK-1が2014年からスタートし、2015年7月に-70kg初代王座決定トーナメントが開催され、マラット・グレゴリアンが優勝。2017年の第2代王者決定トーナメントではチンギス・アラゾフが優勝した。二人とも当時まだ日本でほぼ無名だったが、後にグレゴリアンはクンルンファイト、GLORYの頂点に立ち、アラゾフも今年1月、タイの強豪・スーパーボンを圧倒の末KOしONEの王座を獲得したばかり。初代・第2代王者が揃って世界的な活躍を遂げ、K-1の先見の明が光る格好となる。

 2020年3月の第3代王座決定トーナメントでは木村“フィリップ”ミノルが和島大海ら相手に3試合連続1RKO勝ちと圧巻の強さを見せつけ優勝した。2021年12月、その木村からベルトを奪ったのが現王者の和島大海だ。3RKOで木村をマットに沈めた和島は昨年6月の「THE MATCH 2022」でRISEの“ブラックパンサー”ベイノア相手に大差の判定勝ちを果たし、9月のK-1ではヨーロッパで高い評価を得ているメレティス・カコウバヴァスをKOし、現在6連勝(5KO)と絶好調だ。

 那須川天心vs武尊がメインイベントに据えられたTHE MATCH 2022は、日本の立ち技格闘技の頂上決戦の場でありつつ、時代の節目となる大会となった。THE MATCH後、K-1はSNS上で「#K1NEXT」のハッシュタグを使い、次世代のニュースターが誰になるかをテーマに掲げた。一方で同じ頃、政府の渡航規制が緩和され、K-1にも海外の実力者が少しずつ参戦するようにになり、vs世界も「NEXT」において避けられないテーマとなった。

 そもそもvs世界は30年間ずっとK-1にとっての“日常”だった。今回の「K'FESTA.6」には、タイ・ヨーロッパ等から10名を超える強豪がリングに上がり、ようやくvs世界というK-1の日常が戻ってきた感がある。

 もちろん「人類最激戦区」スーパー・ウェルター級にも、過酷な“日常”が戻ってくる。和島は、ムエタイのラジャダムナン4階級を制覇し、ボクシングでも東洋太平王者となった実績のあるジョムトーン・ストライカージムを挑戦者に迎え初防衛戦に臨む。ジョムトーンは昨年9月からK-1に参戦し、9月にアビラル・ヒマラヤン・チーターを1R終了間際に左ハイキックでマットに沈め、12月には森田奈男樹を1Rから2度ダウンさせ2R序盤に左フックでKOし、レべルの違いを見せつけた。

 カード発表会見で和島は「中村プロデューサーは僕のことが嫌いなんじゃないかってくらい、いつも強い選手ばかり呼んできて…」と苦笑しつつコメント。対サウスポーもプロ23戦目で初だ。しかしここ3戦、下馬評で不利と思われる戦いを圧勝でクリアしており、番狂わせにも期待したくなる。今回に備えタイの名門・シッソンピーノンジムで2週間出稽古しており、その成果も見もの。一方、9月のK-1初戦は3年ぶりの試合だったジョムトーンも、復帰から半年経ち、ベルトが懸かり、より研ぎ澄まされた攻撃を見せだろう。

 最近のK-1では、同じ階級、同じテーマを持った試合を並べ、対比・対立構図をファンにわかりやすく伝える試合順となることが増えた。今大会でもスーパー・ウェルター級タイトルマッチの前には野杁正明vsジャバル・アスケロフ、さらに1つ前にはジョーダン・ピケオーvsアビラルが置かれた。

 野杁は1階級下のウェルター級(70kg)の王者だが、今回は69kg契約。つねづね野杁は「正直、ウェルター級には相手がいません」「70kgが盛り上がっているのであれば70kgに上げるのもアリ。K-1で3階級を制覇したのは武尊君しかいない。常に(ウェルター級に)留まるよりも僕は挑戦者でいたい」と話しており、スーパー・ウェルター級挑戦も視野に入れている。

 対するアスケロフはアンディ・サワーや佐藤嘉洋にも勝利し、ジョルジオ・ペトロシアンやブアカーオ・バンチャメークとも対戦経験があり、野杁の70kg進出の試金石として絶好の相手といえよう。

 その野杁をはじめ和島、ミノル、佐藤とそうそうたるメンバーに勝っているピケオーが3年ぶりにK-1に戻ってくる。K-1ではウェルター級で戦ってきたピケオーだが「これからはK-1スーパー・ウェルター級のベルトを狙っていくつもりだ」とこれからはスーパー・ウェルター級に照準を絞り、健在ぶりを示せるか見もの。対するアビラルも木村、和島、ジョムトーンに敗れたとはいえ、まだ23歳と若く、伸びしろ、ポテンシャルは十分だ。

 今回の「K'FESTA.6」の会場・代々木第一体育館は、K-1の旗揚げの地。K-1 WORLD MAXでも度々使用されてきた。このK-1にとって象徴的な場所で、K-1にとっても海外の猛者が暴れる“日常”が戻り、どういった「人類最激戦区」のドラマが新たにスタートするのだろうか?
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