「K-1 WORLD GP」9.11(日)横浜<コラム>王者・大和哲也「最高の恩返し」と挑戦者・佐々木大蔵「最強の証」 2人の歴史と想いが詰まった“K-1 NEXT”
今大会の目玉の一つは、武尊が返上したベルトを誰が獲るのか、つまり「武尊の次にK-1の主役になる者は誰か」を決めるK-1スーパー・フェザー級王座決定トーナメント。
そしてもう一つの大一番が、K-1スーパー・ライト級タイトルマッチ王者・大和哲也vs挑戦者・佐々木大蔵だ。大和と佐々木は2年前にスーパーファイトで激突し、この時は佐々木が勝利しているが、今回はどうなるのか。単なる「再戦(大和にとってはリベンジマッチ)」ではない、興味深い試合だ。
大和のK-1王座戴冠は、近年稀に見るドラマティックな結末だった。2010年7月、国立代々木競技場第一体育館で開催された「K-1WORLDMAX」の-63kg日本トーナメントを驚異の3連続KO勝利で優勝。一躍「K-1MAXの新たな主役」と注目を浴びながらも、当時のK-1が活動休止となり、大和がK-1のリングで輝くことはなかった。
大和はムエタイ・キックボクシングに戦いの場を移し、合計8本のベルトを獲得した後、新体制で復活したK-1に2017年から参戦。満を持しての「K-1世界王座への再チャレンジ」だったが現実は厳しかった。
2018年3月に野杁正明の持つK-1スーパー・ライト級王座に挑んだ一戦ではKO負けを喫し、同年11月の第3代K-1スーパー・ライト級王座決定トーナメントでは一回戦でゲーオ・ウィラサクレックの左ハイキックに沈んだ。さらに不可思や佐々木大蔵といった同階級のトップクラスの選手たちにもワンマッチで敗れた。
「大和哲也の時代は終わった」と囁かれたものの、大和自身は「必ずK-1王者になる」という夢をあきらめなかった。それまで取り入れることがなかったボクシングジムでの練習をスタートさせ、2021年12月のK-1大阪大会で大野祐志郎相手に復活のKO勝利。今年4月の「K’FESTA.5」でK-1王座挑戦のチャンスを得ると、12年前と同じ代々木第一、しかも12年前にトーナメントを制した時と同じ左フックで、王者・山崎秀晃を一撃KOし、悲願のK-1王者となった。
団体の活動休止と2度の挑戦失敗を乗り越え、12年越しに叶えた34歳でのK-1王座戴冠。これほど分かりやすく「あきらめなければ夢はかなう」を証明してみせたファイターは大和哲也以外にいないだろう。